こんにちは。
私は鹿児島で遺品整理業「整理のゴダイ」を運営している松本周作と申します。
今回は「遺品整理の時期」についての一般的な見解や私の知っている情報、ノウハウをお伝えしたいと思います。
私は遺品整理業者として年間約90件の遺品整理を実施してきました。
また、個別に「遺品整理っていくらぐらいかかるの?」「どういう方法で行えばいいの?」といったご相談もたくさんいただいております。
その中でも多いのが「遺品整理の時期っていつがいいの?」というご相談です。
今回はそのご質問に対してどのよう最適な時期、もしくは避けた方がいい時期についての考え方や実際に遺品整理を行う方法についてお話ししたいと思います。
それではまいります。
【目次】
一般的に遺品整理は以下の流れで行います。
遺品整理は家を相続した人が主となり行います。
遺品整理を行う前に、今後どのように家や土地を活用するのか、もしくは売却するのかを決めてから行うケースが多いです。
ただ、遺品整理後の活用方法は決まっていない状態であっても、家の維持管理を楽にするために一旦片づけるケースも増えてきています。
それぞれのご家庭に事情があるかとは思いますが、1~5のSTEPを見ていくと遺品整理の行う時期っていつがいいんだろう?といういくつかのタイミングが見えてくるかもしれません。
それでは各STEPを見ていきましょう。
1. 遺品整理を始める前に
身近な方が亡くなったとき、残された人たちは次のような流れで故人が残したものを片付けます。
多くの方にとって、遺品整理を行う前に家の相続について考えなければいけません。
相続を踏まえて、まずは誰がどのように遺品整理するか決めておく必要があります。
さらに、今後の故人宅の維持管理や、不動産のその後など検討すべきことがあります。
その上で、実際に遺品整理を行う時期に決まりはありませんが、それぞれの状況別でふさわしいタイミングはあるでしょう。
そして、遺品整理に必要な費用・時間・作業人数について、作業を始める前に把握しておく必要があります。
さらに遺品整理を自分たちで進めるのか、業者に頼むのかも検討しないといけません。
それらの遺品整理を始める前に知っておくべきことを、これから一つひとつ解説していきましょう。
2.相続について(固定資産税・相続の放棄)
遺品整理は家屋を相続した人が行うのが一般的です。
相続した人はその家や土地にかかる固定資産税を払わないといけません。
毎年1月1日に該当する土地建物を所有している人に課税されます。
補足になりますが、もし相続人が複数いて、遺産分割協議を行わないでそのままにしていると、全員に固定資産税の支払い義務が生じてしまいます。
固定資産税の支払を誰が行うのか年内をひとつの区切りと考えて、相続人を決められるよう話し合いを進めていく必要があります。
もしも親の借金が多いなどの事情で相続放棄を選択する場合には、3ヶ月以内に手続きを行わないといけません。
相続放棄をする際には、遺品整理をしてはいけないので着手しないでください。
債権人が訴えたときに遺品整理を行っていると「相続の意思あり」と裁判所に認められるケースがあるためです。
まとめ・固定資産税―翌1月1日時点での所有者に課税。
・だれが家を相続するか決まっていない場合―相続人全員に納税義務が発生。相続人が複数いる場合は速やかな遺産分割協議を。
・相続の放棄―3カ月以内。遺品整理を行ってはいけない。
3.形見分けについて
相続が終わったら、形見分けを行います。
【現金・貴金属類】通帳・記念硬貨切手・美術品
【思い出の品】写真・日記
【信仰の対象】仏壇・神棚・人形
以上のようなものを誰が引き次ぐのか、引き取り手がいない場合はどのように供養や処分を行うのか決める必要があります。
形見分けと一緒にタンス預金などがないかも同時にチェックしましょう。
私たちが遺品整理を行う中で特に気をつけるのが
● 床の間の周り
● リビング
● 収納の多い部屋
です。
故人の性格によってタンス預金の有り所はかなり変わりってきますが、傾向としては
・財産目録を作るような几帳面な方・・・玄関から遠い収納や信仰の対象の近く
・大胆な性格の方・・・よく目や手の触れるリビングやキッチン周り
に隠してある事が多いです。
4.家の維持管理費を考えておく
遺品整理の時期を考える上で、故人宅の維持管理費を先に把握して必要があります。
維持管理費が負担になるようでしたら早めに対処した方がいいですし、逆に負担になってもゆっくり進めたい場合もあるでしょう。
■賃貸住宅の場合
賃貸の場合は家賃がかかります。
毎月の家賃が発生し続けるので、早めに遺品整理を行う人がほとんどです。
よくあるタイミングとしては、次のようなものです。
・葬儀のすぐあと
・次の家賃が発生する前に(月末までに)
・49日が過ぎてすぐに
■持ち家の場合
持ち家の維持管理費は、主に「固定資産税・都市計画税」「水道・電気代」「火災保険」「庭木剪定」の費用がかかります。
そのため、空き家を維持し続けるには年間20万円以上かかります。
内訳は次の通りです。
●庭の草木の手入れ/3万~5万円
●水道・電気代(1500円×12か月)/1.8万円
●管理サービス(4000円×12か月)/4.8万円
●火災保険(空き家用)/3万~4万円
固定資産税がいくらなのか分からない場合は家がある市役所などで「固定資産課税台帳」というものを見れば分かるようになっています。
ただし、納税義務者しか閲覧できないので相続に該当する人しか見ることができません。
ちなみに、人が住まなくなった空き家はかなりの速さで傷んでいきます。
空気が通らなくなり、虫やカビが発生しやすくなるからです。
仮に空き家を維持するにしても、中の遺品は早い段階で整理しておいた方がいいでしょう。
なぜなら、家財道具や生活用品がそのままだと、家の掃除がしづらいことに加えて、目に見えないところが傷んでいることもあるからです。
家の中を片付けていた方が、風のとおりもよく、手入れしやすいので早めの遺品整理がおすすめです。
また、食べ物や調味料がそのままにしてあると虫が大量発生する可能性が大きいので、乾物も含め食べ物は全て早めに処理しましょう!
全体的な遺品整理を後回しにするとしても、食料は早く片付けるのが大切です。
家の維持管理を考える上で残しておいた方がいいものは以下のとおりです。
・水道・電気
・カーテン
・照明
維持費を抑えるために「水道・電気」を止めようと考えるかもしれません。
しかし、定期的(可能であれば月に1度くらい)に空気を入れ換え、水を流すことでカビの抑制ができます。
また、明かりをつけられるようにしておいた方が、家の内覧のときに家の中がきれいに見えますし、手入れするときに電気があった方が掃除機も使えるので何かと便利です。
家屋を維持するには水道・電気は契約し続けた方が望ましいのです。
カーテンは床の日焼けを防ぐことや換気のしやすさの観点から残しておいた方がいいでしょう。
雨戸を閉めっぱなしにしてしまうと換気がしづらい上に、外から見てすぐに空き家と分かるので空き巣に狙われやすくなります。
ちなみに遺品整理を行って家財道具がない状態なら窓を割られたりして空き巣に入られたりする確率もグッと下がります。
■相続人が故人宅から離れている場合
相続人が故人宅から離れたところに住んでいる場合は、家賃や維持管理費に加えて帰省できる回数やタイミング、費用を考える必要があります。
故人宅から近ければ、通いながら片付けや手入れすることができますが、離れて住んでいると、帰省できる日程や日数に限界があるため家の維持管理が負担になります。
時間がとれない方は葬儀の帰省期間中(忌引き期間中)に遺品整理まで済ませる場合もあります。
遺品整理後に活用方法が決まっていない場合はさまざまな空き家管理サービスを利用するといいでしょう。
たとえば、地域のシルバー人材センターでは1回2,000~6,000円程度で換気や通水、庭の管理などを行ってくれます。
・毎月の家賃が発生するため、「葬儀のすぐあと」「次の家賃が発生する前(月末までに)」「49日が過ぎてすぐに」のタイミングで片付けるケースが多い。
■持ち家
・家の維持管理費は年間大体20万円以上かかる
(「固定資産税・都市計画税」「水道・電気代」「火災保険」「庭木剪定」など)
・人の住まない空き家はかなりの速度で傷んでいく
・空き家を維持するために、「水道電気」「カーテン」「照明」は残しておく
■遠方に住んでいる場合
・帰省できる日程や日数、費用(交通費)を考えて計画する。葬儀の帰省期間に遺品整理まで済ませる場合も。
・1回2,000~6,000円程度で空き家管理サービスを利用することもできる。
5.不動産のその後を考えておく
遺品整理を行った後は故人宅を誰かが引き継いで住むのか、売却するのか、これについても決める必要があります。
先ほどお伝えしたように、持ち家の維持管理費は年間20万円以上かかります。
売却するタイミングは人それぞれですが、維持管理費を考えると早い方がいいでしょう。
■親族の誰かが住む
基本的に、住む人の意思とタイミングで遺品整理すればよいでしょう。
ただし、形見分けは事前にやっておく必要があります。
■売却する
①建物に不動産の価値があり、中古物件として売却
家財道具付きで売れるケースはほぼないので、物件公開前に遺品整理をする必要があります。
大手の不動産サイト、SUMMOやアットホームなどのサイトで中古物件の内見写真を見てみても、家具付きの物件はまずありません。
家財が残っていることで物件の価値は下がる傾向にあるためです。
②建物として価値がないので、解体して更地にして売る
家財道具が残ったままでは家を解体できません。
なぜなら、
・家財道具 = 一般廃棄物
・家屋 = 産業廃棄物
という扱いになるからです。
解体業者は産業廃棄物しか扱えないので、中に一般廃棄物である家財道具が残っていると、解体を進めることができません。
解体前に、まず遺品整理を行い家の中を空にする必要があります。
③上記のどちらとも判断がつかない(中古物件として売れるか微妙)
不動産によっては建物が残ったままの状態でも、中古物件・土地の両方で売却を募ってくれるケースがあります。
なので、いきなり解体せずにまずは遺品整理だけ行っておくとよいでしょう。
・住む人のタイミングで遺品整理。形見分けは事前に行う。
■不動産を売却
①建物に不動産の価値があり、中古物件として売却
②建物として価値がないので、解体して更地にして売る
③中古物件として売れるか判断つかない
→いずれのケースでも、まずは遺品整理をしておく必要がある。
6.遺品整理は「喪が明ける」のを待つべき?
今までご説明してきたように、遺品整理にあたって、相続、家の維持管理費、不動産のその後などについて検討しつつ決めていく必要があります。
では、これらを決めた後に、実際いつから遺品整理をしてよいのでしょうか?
宗教の観点から見たときに、はっきりとした決まりがあるわけではありませんが一般的には喪が明ければ遺品整理をしても問題ないとされています。
喪の期間は、仏教四十九日、神道五十日祭です。
ただし、喪の期間でも遺品整理をしても大丈夫だと考えることもできます。
元々、喪に服す意味は、神道の「死は穢れ(けがれ)である」が由来です。
身近な人が亡くなった人には穢れがついていると考え、「人に穢れを広めないように」と行動を慎むようになったのです。
昔は、喪中には喪服を着て、お酒や肉を絶っていました。
現在はそこまでしませんが、年賀状やお中元、結婚式などの派手なことやお祝い事を避けるのが一般的とされています。
しかし遺品整理は祝い事ではありません。
なので、避けなくても問題はないとも解釈できるのです。
故人宅から離れた場所に住んでいたり、賃貸の家賃を支払うのが難しかったり、人それぞれ事情があり、早く対応しなければいけないこともあるでしょう。
そのため、葬儀の帰省期間(忌引き期間中)に遺品整理まで済ませる場合もあります。
ただし、近親者の中に「喪が明けない内に片付けるなんて薄情だ」と考える人がいる場合もあるので、宗教的な解釈だけでなく周囲の感情面にも考慮しなければならないのが遺品整理の難しいところです。
後々のトラブルを考えると、近親者の考えも汲んで日程を決めた方がいいかもしれません。
まとめ・喪の期間は仏教四十九日、神道五十日祭。一般的には喪が明ければ遺品整理をしても問題ない。
・そもそも喪の期間は祝い事を慎むもの。そのため遺品整理をしても問題ないとの解釈もできる。
・葬儀の帰省期間(忌引き期間中)に遺品整理まで済ませる場合も。
・近親者で「喪が明けない内に片付けるなんて薄情だ!」と考える人もいるので、考慮する必要がある。
7.遺品整理の所要時間~データで見る遺品整理~
さて、実際に遺品整理に取り掛かることになったとき、考慮すべきはどれだけ時間がかかるかです。
遺品整理の所要時間は、残された家財の量が大きく関係してきます。
そして、家財の量は家の大きさ(床面積)で変わってきます。
整理のゴダイが2014年~2019年に行った420件の遺品整理実績を元に、平均をまとめました。
また、片付けを親族のみで行った場合と、業者に依頼した場合の所要日数、費用の目安も記載しています。
遺品整理をする上での参考にしてみてください。
※東京と地方で片付け目安金額が違う主な理由は「ごみ処分費の違い」です。
※都会データは関東・中部・関西で活動する遺品整理業者へ確認
【補足】 東京と地方のごみ処分費の違い
家の中の家財道具は「一般廃棄物」として処分します。
そして、その処分費用は自治体ごとに大きく異なります。
東京が高く、地方が安い傾向にありますが、金額は自治体によるので該当地域の「一般廃棄物」処分費用を確認しておくことをおすすめします。
都市部 | 地方 | ||
東京23区 | 15.5円 | 青森市 | 10円 |
府中市 | 42円 | 広島市 | 7円 |
三鷹市 | 35円 | 高知市 | 7円 |
大阪市 | 27円 | 福岡市 | 14円 |
吹田市 | 10.5円 | 鹿児島市 | 7円 |
■ 3,000kgを処分で持ち込んだ場合
府中市 42円×3,000kg=126,000円
広島市 7円×3,000kg=21,000円
差額 105,000円
遺品整理はやみくもに作業を始めるのではなく、まず費用・時間・作業人数を確認する必要があります。
それらふまえてはじめて遺品整理のスケジュールが立てられるのです。
昔は近親者や近所とのつながりが深く、形見分けと遺品整理を同時に行うことが多くありました。
しかし、近年では、親戚や近所づきあいが希薄な場合が多い上に、高齢化社会に伴い相続人の体力的に遺品整理が難しいこと、遠方に住んでいて時間が取れないことなどから、遺品整理業者に頼む傾向が増えています。
自分たちで遺品整理を行うか、遺品整理業者にお願いをするか、どちらが良いというわけではありません。
自分たちで片付けた場合にかかる時間や費用と、業者に依頼した場合にかかる時間と費用、これらを考えた上で、自分たちにあった方法を選択することが大切です。
8.生前整理について
最近、「終活」や「生前整理」への注目が高まっており、残された人に苦労をかけないように片づけを進めておこうと考える人が多くいらっしゃいます。
もちろん本人が自主的に片付けている場合はいいのですが、本人に代わって周りの人間が片づけを進めるのには注意が必要です。
本人がご存命で、意思疎通が取れるのでしたら、できるだけ本人の意向を重視したほうがいいでしょう。
「思い出の品に囲まれて亡くなる幸せ」も大事にして欲しいと思います。
家族からは不用品に見えるものでも、本人にとっては大切な思い出が詰まったものがたくさんあるからです。
それらを無理に片づけてしまうと、大きな喪失感を覚えるかもしれません。
ただし、生活するのに支障があるほど散らかっているようであれば「よく使う場所、よく通る場所」に限定して生前生理をした方がいいかもしれません。
本人が捨てるのに抵抗があるようであれば片付けを進めるのは難しいのが実態ですが、安全面、衛生面で心配なことを伝えて、片付けられるものは片付けた方がいいでしょう。
また、たとえば賃貸住宅から介護施設などに引っ越す際、思い出の品を保管しておくのに費用がかさむようであれば、整理するひとつのタイミングです。
費用的な心配があるなら、本人が生きている内に、遺品整理をする場合はどのくらいの費用がかかりそうか見積もりだけ取っておき、誰がどれだけ負担するか決めておくとトラブルが少ないでしょう。
さいごに
これまでお話ししてきました遺品整理を行う時期について図にまとめました。
図解にあるように、遺品整理には気持ちの面や時間、費用などスケジュール通りにいかない要素が多くあります。
ただ、そのまま放置してしまうと建物が傷み解体するしか選択肢がなくなってしまうかもしれません。
虫の発生が多い場合や床が抜けそうな状況にまで放置してしまうと遺品整理業者に片付けを頼むにしてもさらに割高になる可能性が高くなります。
※整理のゴダイでは料金据え置きで対応しておりますが一般的には高くなることがほとんどです。
いざ遺品整理に直面したときに、この記事の情報が少しでもみなさんの手助けになると幸いです。