少子高齢化、核家族化が進む現代、遺品整理業への需要が高まっています。

前回の記事では、鹿児島で遺品整理・不用品回収サービスを行う「整理のゴダイ」松本さんに遺品整理というお仕事についての考え方や思いを聞かせていただきました。

それでは、実際の現場ではどのように遺品整理を進めていくのでしょうか?

「仏壇や思い出の品はどう片付けていくのか?」
「一日で遺品整理を全部終わらせられるのか?」

など、気になることがたくさんあります。
そこで、私フリーライターの横田が「整理のゴダイ」の現場に同行させていただき、お仕事の流れを取材してきました。

 

遺品整理の現場

遺品整理のお宅は、鹿児島市郊外の平屋一戸建て・6LDKのお宅。
スタッフは3名、皆さん迷いなく手を動かして家財を分別し、8時間15分で片づけを終えました。
今回の記事では、スピーディーかつ丁寧な仕事の舞台裏を紹介します。

 

■7:00会社集合 2台のトラックに分かれて現場へ

現場訪問前はどのような準備をされていますか?

いかに段取りよく仕事を進めるかが大切なので、現場の状況と一日の流れをスタッフ間で共有しておきます。
家の大きさや家財の量、注意すべき貴重品などについてです。
また、搬出に時間がかかるものをいつ運び出すかも話し合っておきます。
今回の現場では約250kgのピアノがあるので、その搬出のタイミングと手順を事前に共有しました。

続いて、現場で必要となるコンテナの数や工具などを割り出して、トラックに詰め込みます。
必要以上にコンテナを詰め込んでしまうと回収した家財を入れるスペースを圧迫するので、今までの現場経験を踏まえて必要最低限の量を用意しています。

 

■8:15 現場到着

今回の現場はどのようなところですか?

鹿児島市郊外の平屋一戸建て・6LDKのお宅の遺品整理です。
今回作業させていただくお宅は遺族の方が貴重品や思い出の品などすでに片付けてあるので、家財の搬出に集中できます。
また、仏壇の供養をお願いしたいとのことだったので、仏壇を包む布を用意し、丁寧に対応させていただきます。

 

遺品整理をする前のお宅

 

遺品整理をする前のお宅
片付ける前のお部屋の様子。

 

■分別作業

どのような流れで遺品整理を進めていくのですか?

まずは、部屋ごとに分かれて分別作業から進めていきます。
今回は私を入れて3人のスタッフで作業しています。
寝室なら布団類、キッチンなら金物類、子ども部屋なら紙類などが部屋に多く残っていますね。

 

キッチンの遺品整理をする整理のゴダイ代表松本周作さん
食器棚からお皿をコンテナに入れていく松本さん。

 

キッチンの遺品整理

 

段ボールではなくて、コンテナを使うのはどうしてですか?

まず、ダンボールと違って底が抜ける心配が無いので安定して持てます。
そしてスタッキング機能(積み重ねる)があるので食器棚とコンテナの距離を近づけられます。
これにより作業の効率化を図っております。
さらにトラックへ積み込む際もすき間なくキッチリ収まるので、食器などの割れ物にはベストな選択だと思っています。

 

衣類や寝具の分別はどのように行うのですか?

 

寝室の遺品整理
寝室の様子。

衣類や寝具類はリサイクルできるものを後で選別するので、一旦ビニール袋に入れます。
昔のお宅ですと、客用布団も含め10組~15組くらいあるケースが多いですね。
かなりの量になります。
ビニール袋に入れておくと後で運びやすいし、トラックの隙間を利用してぎっしり詰め込むこともできます。
そのために重要なのが袋の質です。
1枚35円の破れにくい厚手のものを使用しています。
一番安い袋だと1枚10円くらいなので3.5倍のコストになりますが、作業中に破れにくく余計な労力や時間がかかり人件費が膨らむのを防ぎ、結果的に費用を抑えることができます。

 

使う道具や分別に使う資材は考え抜かれているんですね。

日々の現場で「これは要領が悪かったかな」「このやり方はやりづらかった」ということは必ず後で解決策を考えて、よりよい作業方法を常に模索しています。
少しでも気になったことは絶対にそのままにしないのが良いサービスを追求する上で大切なことです。
丁寧に作業する部分と、手早く効率よく作業する部分は切り分けて考えています。
時間をかけるほどお客様に請求する費用が増えてしまいがちなので、バランスが大事だと思っています。

 

■積み込み作業

分別作業が進んだら、次はどのような動きをされるのですか?

 

整理のゴダイ3トントラックへの詰め込み

ある程度分別作業が進んだら、並行してトラックへの積み込みを進めていきます。
「整理のゴダイ」では、プライバシーに配慮して、大型トラックか箱付きのトラックで現場に伺っています。
これは、近所の人が通った時でも回収するものが見られないようにする配慮でもあります。
箱付きでない平トラックだと搬出した家財が丸見えになってしまう上に運搬するのに何度も往復しないといけないので、そのようなタイプの車は使わないようにしています。

さらに、「整理のゴダイ」では最大4トントラックを保有することで、一度の運搬で大量の家具を搬出できるようにしました。
一度に大量の家具を運搬すれば、その分作業時間と費用を抑えることができます。

 

整理のゴダイの3トントラック内部
トラック内部は、奥行きがありたくさん家財が入ります。

 

詰め込みの時に気を付けているのが、きちんと整理整頓しておくことです。
そうすることでたくさんの家財を詰め込めます。
また、ごみ処分場で搬出するときの作業効率がよくなります。

 

整理のゴダイ3トントラックへの詰め込み

あと、私がこだわっているのは隙間までぎっしり荷物を詰め込むことです。
家具やコンテナなどを積み込んだ後トラック上部などに多少の隙間ができるので、ここに先ほど厚手の袋に分別しておいたリサイクルできない分の布類などを詰め込みます。
穴が開きにくい丈夫な袋を使っているからこそ、このような詰め込み方ができるのです。

 

整理のゴダイ3トントラックへの詰め込み

最終的にはここまで詰め込みます。
通常だったら空いてしまうトラック上部にも荷物を詰めこむことで、一度の運搬で多くの家財を搬出できるようにしました。
何度も搬出で往復すると時間がかかってしまうので、コストを下げるうえで一度にたくさんの家財を搬出することが大切なんです。

 

■解体作業

ベッドなどの搬出しにくい大型家具はどのように運んでいるのですか?

大きな家具や日曜大工で打ち付けてある棚などは解体して運搬することで、作業スピードと労力を短縮しています。

 

遺品整理の現場で家具の解体
日曜大工で打ち付けられた棚を解体している様子
※釘を踏んだときのために上履きを履いています。

 

解体のスピードが速くて驚きました。やはり手馴れているからなのでしょうか?

手馴れているのもありますが、効率よく作業できる工具を導入しているのが大きいですね。
工具類は作業スピードに直結します。
「整理のゴダイ」で使っているドライバーは4万円くらいのものです。
安い買い物ではありませんが必要な投資です。
安価な手回しのドライバーでも解体できますが、作業に時間がかかりすぎてしまうので。

 

遺品整理の現場で使う工具類
工具類は整頓して保管。

 

■10:30 約250kgピアノの運搬

今回の現場で一番搬出が大変なものは何ですか?

 

遺品整理の現場でピアノの運搬

今回の現場で一番重いのがピアノです。
250kg近くもあります。
一般的にピアノの運搬はとても難しく、ピアノの運搬を専門とする業者がいるほどです。
重たくて運搬しにくいため、下手に動かすとケガをする危険性もあるからです。
遺品整理業者によっては、ピアノの運搬は引き受けていないところもあります。
(試しに著者である私も持ち上げてみましたが、渾身の力を込めてもピクリとも動きませんでした。)

 

遺品整理の現場でピアノの運搬

「整理のゴダイ」では、ピアノ運搬ができるスタッフがいるので引き受けています。
モッコという道具を使い、スタッフ2人で声をかけながら運びます。
途中、段差のある所では力のかかり方が変わるので慎重に進めます。

 

ピアノをトラックに積み込む様子

うちで所有しているトラックはリフト付きなので、ピアノのような重い荷物もリフトで上げ下げできます。
リフトが付いていなかったら、身体に大きな負担と時間がかかってしまうので、トラックはすべてリフト付きのものを所有しています。

 

■11:00トラックが一杯になったので搬出へ

搬出はどのように行うのですか?

基本的に、搬出はスタッフ1人で行います。
トラックが一杯になったら現場で引き続き作業する2人と、回収した家財を処分しに行く1人に分かれて仕事を進めます。
今回の現場にはトラック2台で来ているのですが、現場で作業するスタッフ2人は、片づけを進めながらもう一台のトラックに家財を搬入しています。

搬出を担当する私は、今から車で片道約40分のところにある処分施設へ向かいます。

この3トントラックにはかなりの量の家財が詰め込まれていますよね。一人で搬出するのは大変ではないですか?

搬出を一人でやらなくてはいけない大変さはありますが、作業スピードを一気に上げることができます。
処分場へ行くのにスタッフみんなで移動してしまうと、その間現場の片付けは進みません。また、大人数で処分場で荷下ろししても時間は10分程度しか短縮できません。
それならこの部分は効率を重視したほうがいい部分になりますよね。

 

■処分場

処分場ではどのように搬出しているのですか?

 

遺品整理の家財搬出の様子

 

遺品整理の家財搬出の様子

処分場では、燃えるゴミと不燃ごみに分けて家財を搬出します。
「整理のゴダイ」は一般廃棄物収集運搬許可の資格を保有しているので、公共のごみ処理場を利用した割安なごみ処分が可能です。

ごみ処理場で搬出した家財の総重量は、1,240kgでした。
これにプラスして、ごみ処理場で受け入れていないピアノ約250kgを産業廃棄物処理施設で処分しました。
つまり、一人で搬出した家財の量は約1,500kg(1.5トン)です。
かかった時間は現場からの往復で1時間、搬出作業で1時間、合計2時間でした。

一人で1.5トンの荷物を降ろす。誰にでもできる仕事ではないですよね。

遺品整理の作業の基本は運搬などの力仕事なので、体力はとても重要です。
体力的な力量が十分にあってこそスピーディーな片付けが可能になりますし、貴重品の捜索や細やかな配慮が行き届くと思っています。
また、効率のよい段取りを常に模索する必要がありますし、ケガや事故なく片付けることも大切なので、現場では集中力も必要不可欠です。
■昼休憩後再び現場へ

この後はどういう流れになるのですか?

昼休憩をはさんで再び現場へ戻ります。
現場へ戻ってくると、片付けともう一台のトラックへの詰め込みはほぼ終わっている状態です。
なので、あとは貴重品や思い出の品を念入りにチェックして、仕上げの清掃作業を行います。

 

■思い出の品、貴重品の目視チェック

貴重品や思い出の品はどのように探されているのですか?

基本的に、見積もり時のヒアリングシートで残すべきもの、探すべきものをお伺いしており、それに沿って進めます。
今回の現場はすでに遺族の方が貴重品や思い出の品を片付けていたので、特にこちらで探索するものはありません。
ですが、念のため仏壇やリビングのサイドボード周辺などはチェックするようにしています。
もし現金や通帳などを見つけたら保管しておき、別途確認するようにしています。

 

貴重品がないか確認する遺品整理の様子
仏壇周辺の引き出しは必ず目視チェックを行います。

 

■仏壇の片付け

―仏壇の処分も行ってくれるのですか?

はい。「整理のゴダイ」では鹿児島県内の遺品整理業界の中で、唯一、お仏壇やご遺影などの供養を追加料金なしで行っております。(※お仏壇のみの回収や2トントラックプラン未満の少量回収の場合は別途料金が必要となります。)

 

遺品整理現場仏壇の搬出
仏壇は2人がかりで丁寧に運んでいます。

 

遺品整理の現場仏壇の搬出
傷などがつかないようカバーをかけて運搬。

回収した仏壇は、提携寺院での合同供養に出しています。
合同供養は年に2回、他のお客様のご供養品と一緒に実施しております。
供養の完了報告を希望される場合は手数料2,000円で「合同供養証明書」を写真入りで郵送し、報告させていただきます。

 

■清掃作業

清掃作業は、どこの遺品整理業者でもやってくれるのですか?

これは業者によるかと思います。
弊社では遺品整理後、お部屋から玄関まで清掃作業まで行います。
遺品整理をご依頼されるお客様の中には「家が片付いた後に賃貸に出したい」という方も多くいらっしゃいます。
作業完了後にすぐに内覧できるくらいに仕上げた方が喜んでいただけるだろうと思い、清掃作業を行うようにしています。

 

■17:30作業完了
すべての作業が終わりました。ビフォーアフターのお部屋画像がこちらです。

家財が搬出されてすっきり片付いた部屋は、光の通りがよいせいか明るく清潔に見えました。物がないだけでこんなに印象が変わるのですね。

 

■まとめ

今回の現場は、お昼休憩1時間を差し引いてトータルで8時間15分かかりました。取材対応がなければ1時間30分程度は時間短縮でき6時間45分で終わったでしょう。

一日で全て片付けてもらえるのは、依頼側から見て、金銭的にも精神的にも負担の少ないことだと思いました。

お仕事に同行して印象に残っているのは、段取りや要領の良さはもちろんのこと「どうしたらもっと効率よく片づけを進められるか」を常に考えている松本さんの仕事姿勢でした。
使う道具や仕事の進め方、スタッフの動き方など、「こうした方がいいかも」とか「このやり方は要領が悪い」と感じたことをそのままにせず、必ず解決策を探っていらっしゃいました。
その小さな積み重ねがやがて大きくなり、迅速丁寧な現場での作業につながっているようです。

遺品整理という仕事の特性上、メディアに取り上げられるときは「遺族の気持ちにどう寄り添っているのか」や「思い出の品や貴重品をどう扱うのか」という部分に光が当たったものが多い傾向があります。
ただ、それ以前に「料金の明朗化」や「時間の約束」といったサービスの基本の部分が不十分な業界だと松本さんは感じているそうです。

だからこそ、現場で作業スピードや効率を上げ、その分費用を抑えてサービスの質を上げていくことにこそ、お客さんへの最大の貢献があるように私は思いました。

 

鹿児島県内であれば、今回取材した「整理のゴダイ」の遺品整理サービスをご利用いただく事も可能だそうで、興味がある方は一度ご相談してみてもいいかもしれません。

「整理のゴダイ」の遺品整理サービス

 

少子高齢化が進み、遺品整理という仕事が必要とされている今、遺品整理のやり方がシステムとして成熟していくことは重要であると思います。
今回の現場では、業界が成熟していくために必要な仕事への向き合い方をたくさん学ばせていただきました。